インタビュー

特殊鋼のプロが認めた曲げ技術|クマガイ特殊鋼が森井鉄工所を選んだ理由

特殊鋼のプロが認めた曲げ技術

「ここならできそうだ」加工事例から始まった、特殊鋼のプロと曲げのプロの出会い

「うちで受注したことのある案件と、同じような加工事例が載っていたんです。材質まで書いてあったので、『ここならできそうだ』と思いました」
そう語るのは、1913年創業、110年以上にわたり特殊鋼・鋼板を扱い続けてきたクマガイ特殊鋼株式会社様です。
高張力鋼板「WEL-TEN®」や耐摩耗鋼板「ABREX®」などを扱い、豊富な在庫と調達力で、全国のものづくり企業を支えてきた特殊鋼のプロフェッショナル。現在は鋼板の販売や切断だけでなく、曲げ、機械加工、溶接などを組み合わせ、「図面通りの部品」として納める一貫加工にも力を入れています。
そんなクマガイ特殊鋼様が、特殊鋼の難しい曲げ加工を相談する会社としてWebで見つけたのが、森井鉄工所でした。
なぜ、長年特殊鋼に向き合ってきたプロが森井鉄工所に可能性を感じたのか。
クマガイ特殊鋼株式会社 代表取締役社長 熊谷憧一郎様、営業部 部長 奥村太規様、営業部 営業課 市場開拓係 徳永達哉様に、出会いのきっかけや森井鉄工所の曲げ技術、今後の展望についてお話を伺いました。

【取材協力】
クマガイ特殊鋼株式会社
代表取締役社長 熊谷 様
営業部 部長 奥村 様 
特殊鋼販売技士1級
営業部 営業課 市場開拓係 徳永 様 
特殊鋼販売技士1級
URL 
https://www.kumagai-steel.co.jp/

クマガイ特殊鋼株式会社

鋼板を売るだけではない。「図面通りの部品まで」というニーズに応える

― まず、クマガイ特殊鋼様の事業について教えてください。

奥村様:当社は1913年創業で、特殊鋼や鋼板を中心に扱っている専門商社でございます。高張力鋼板のWEL-TENや耐摩耗鋼板のABREXなどを主に取り扱っております。
以前は材料そのものを販売したり、指定された形状に切断したりする仕事が中心でした。ただ近年、非常に増えているのが「図面通りの部品として納めてほしい」というご要望です。
レーザーで切断して終わりではなく、そこから曲げ加工や機械加工を行い、案件によっては溶接まで対応する。お客様がそのまま使用できる状態まで仕上げてほしいというニーズが増えております。

― 特殊鋼の調達から加工まで、一貫して対応するということですね。

奥村様:そうですね。お客様の立場から考えますと、切断はA社、曲げはB社、機械加工はC社というように、それぞれの工程を別々の会社へ発注するのは非常に大変です。
そのため当社でも、長年培ってきた特殊鋼の調達力を生かしながら、図面をいただければ部品として納められる体制を強化しております。
そこで重要になるのが、加工パートナーの存在です。特に特殊鋼の曲げは、どこの会社でも対応できる加工ではございません。

110年以上にわたり特殊鋼を扱い、材料の特性と市場の変化を見続けてきたクマガイ特殊鋼様。近年は自社の切断技術と加工ネットワークを組み合わせ、鋼板を材料で終わらせず、お客様が必要とする部品まで仕上げる体制を強化しています。

「うちの案件と同じようなものがある」HPの加工事例で感じた可能性

― 森井鉄工所を知ったきっかけを教えてください。

徳永様:当時、特殊鋼を高い品質で曲げてもらえる会社を探していたんです。
近場にもお付き合いのある曲げ加工会社はありましたが、難しい案件になるほど、求めるクオリティを安定して担保するのが難しかったんですね。
そもそも特殊鋼の曲げ自体が難しい。その一方で、図面上では非常に厳しい精度を求められることもあります。材料の特性を考えると簡単ではない要求でも、図面では当然のように寸法や精度が指定されている。
そういった案件に対応できる加工会社は、本当に限られるんですよ。
そんな中、スタッフがWebで加工会社を探していて、森井鉄工所さんのホームページを見つけました。

― ホームページのどのような部分が気になったのでしょうか。

熊谷社長:加工事例ですね。
事例を見ていると、「これぐらいの大きさのものは、こうやって曲げるんだ」というイメージが湧いたんです。
しかも、僕らが過去に受注したことのある案件と同じようなものが載っていて、材質も具体的に書いてあった。それを見て「ここならできそうだ」と思ったんですよね。
「曲げ加工ができます」と書いてある会社はあります。でも森井鉄工所さんのホームページは、実際にどんなものを、どんな材料で曲げているのかが見える。僕らとしては、それがすごく大きかったです。

森井鉄工所がホームページで公開してきた加工事例には、大きさや形状、材質など具体的な情報が掲載されています。その積み重ねが、特殊鋼を扱うクマガイ特殊鋼様との出会いにつながりました。

最新加工事例

「ここならできそうだ」が確信に変わった。相談して感じた経験値

― 実際に森井鉄工所へ相談されたのは、どのような案件だったのでしょうか。

熊谷社長:精度要求が非常に厳しくて、正直かなり難しい案件があったんです。自社や、それまで相談していた加工会社では対応が難しい。
「この仕事をどこに相談しようか」と考えて、森井鉄工所さんへ伺いました。
実際に話をしてみると、僕らが相談した内容に近い加工について、森井鉄工所さんにはすでに経験があったんですよね。
ホームページを見た時点で「ここならできそうだ」と感じていましたが、直接話をして、その印象が確信に変わりました。難しい加工のポイントや材料の話をしても話が早い。
「やっぱり、相談するならここだったんだな」と思いましたね。

Webで見つけた森井鉄工所。実際に訪問すると、相談内容に近い加工経験があり、技術的な話もスムーズに進みました。ホームページで感じた期待が、実際の相談を通じて確信へと変わっていきました。

割れる。大きく戻る。特殊鋼の曲げ加工が難しい理由

― 耐摩耗鋼板や高張力鋼板の曲げは、なぜ難しいのでしょうか。

熊谷社長:まず、素材が非常に硬いですよね。曲げるためには、それだけ強い力が必要になります。
当然、設備力の問題も出てきます。僕らが加工先を探していても、こうした材料を曲げられる会社自体が非常に少ない。中京地区でも、対応できる設備を持つ会社は限られると思います。
それに、特殊鋼は「割れる」リスクがあります。
過去に材料が割れて怪我につながるような事故を経験して、「危ないから特殊鋼はもうやらない」と断る加工会社もある。そういう話も聞いています。
設備があれば誰でもできるという加工ではないですよね。

耐摩耗鋼板の曲げ加工で割れないために|最小R・圧延方向・端(ハナ)の長さを解説

― 曲げた後の精度を出すことも難しいのでしょうか。

熊谷社長:難しいと思います。
高張力鋼板は硬いですから、スプリングバック、いわゆるバネ戻りが大きい。
普通の鉄なら、一度曲げて少し調整する作業が30分ぐらいで終わるものでも、高張力鋼板では45分、50分とかかることもあると思います。
曲げても戻ってしまう。その戻りを考えながら寸法を出していかなければならない。普通の加工会社では、なかなか対応できないと思いますね。

曲げ加工のバネ戻り対策|SS400・耐摩耗鋼板で精度が出ない原因と解決方法

― その中で、森井鉄工所の強みはどこにあると感じていますか。

徳永様:設備力はもちろんですが、やはり経験とノウハウだと思いますね。
僕自身、特殊鋼を扱う中でさまざまな材料を見ていますが、材料が硬くなるほど曲げ加工は単純ではなくなるんですよ。
特にスプリングバックが大きい材料では、ただ圧力をかければ狙った角度になるわけではありません。
森井鉄工所さんは金型の種類を非常に多く持っています。材料や板厚、加工する形状を見ながら、「この条件ならどの金型を使うのか」「どれぐらい戻るのか」を考えられる。
設備があるだけではできません。やはり長年の経験が必要な加工だと思います。

特殊鋼販売技士1級の資格を持ち、日々特殊鋼を必要とするお客様の相談に向き合う徳永様。材料の特性を知る専門家の目から見ても、森井鉄工所の強みは大型設備だけではなく、豊富な金型と長年積み重ねてきた曲げ加工の経験にありました。

森井鉄工所の豊富な金型の一例

「この人ができないと言ったら、本当にできない」森井社長の実直さ

― 初めて森井社長に会った時、どのような印象を持ちましたか。

熊谷社長:これは森井さんに怒られるかもしれませんが(笑)。
ホームページがすごくしっかりしているじゃないですか。だから最初は、Webマーケティングのテクニックが上手な、ちょっと軽い感じの人がやっているのかなと思っていたんです(笑)。

― 実際に会ってみると違いましたか。

熊谷社長:良い意味で、全然違いましたね。
一つひとつの仕事にものすごく実直な人でした。完全に技術者というか、職人肌ですよね。
自分ができることを必要以上に大きく言う人ではない。話をしていても、きちんと加工や技術を見て判断していることが分かるんです。
だから僕としては、「ここでできないと言われたら、多分本当にできないんだろうな」と思える。
それはものすごく大きな安心感ですよね。もちろん、インコを愛する優しい一面もありますけど(笑)。

何でもできると言うのではなく、材料や図面を見て実直に判断する。その姿勢が、数多くの特殊鋼案件を見てきた熊谷社長からの信頼につながっています。

自宅で飼っている文鳥とオカメインコ
自宅で飼っている文鳥とオカメインコ

最大40mmの高張力鋼板を高精度で切断。両社の技術を組み合わせる

― 今後、森井鉄工所とはどのような連携を考えていますか。

熊谷社長:これまで森井鉄工所さんは、材料を支給してもらって曲げる仕事が中心だったと思います。
ただ、僕らとしては、今後は森井鉄工所さん自身が材料を仕入れて、鉄の構造物を素材の調達から溶接、据え付けまで一括で対応する。そういう高付加価値なモデルを増やしていくと、さらに可能性が広がると思っています。
材料については、僕らが力になれます。
僕らはメーカー直結なので、地場で特殊鋼をさまざまな流通経由で調達するよりは、多少安くご提供できる。
さらに、うちの設備なら最大40mmまで高張力系の切断ができます。精度も、レンジでいけばプラスマイナス1mmもないぐらいで切ることができる。
僕らの材料調達力や切断技術と、森井鉄工所さんの曲げ技術を組み合わせる。これはかなり可能性があると思っています。

― 切断時の精度が高まることで、曲げ加工にもメリットがありますか。

森井社長:当然、製品の精度向上はできると思います。これは非常にありがたいことですよね。
切断された材料そのものの寸法精度が高ければ、その後の曲げ加工も、より狙った寸法へ追い込みやすくなります。

特殊鋼の調達力と高精度なレーザー切断技術を持つクマガイ特殊鋼様と、難しい材料のスプリングバックを読み、狙った形状に仕上げる森井鉄工所。互いの強みを組み合わせることで、加工精度や対応範囲のさらなる向上が期待されています。

お客様のニーズへよりダイレクトに寄り添うために

― お話を伺っていると、両社の考え方にも共通する部分がありますね。

熊谷社長:そうですね。
Webは、私たちとお客様をつなぐ、非常に重要な窓口だと考えています。
私たちが目指しているのは、お客様が本当に必要としていることに対して、もっとダイレクトに、かつ迅速に応えられる関係性です。Webを通じてお客様と直接つながることができれば、図面やご要望の背景にある意図をより細かく、正確に汲み取ることができます。その結果、手戻りやトラブルが減り、品質や納期調整の面でも、より高いレベルでお客様の期待にお応えできるはずです。
QDC(品質・納期・コスト)の質を徹底的に高め、特殊鋼の厚板を、もっと便利に、身近に感じていただける存在になること。そして、お客様の課題に徹底的に寄り添い、共に解決策を見出していく体制を確立したいと考えています。

森井社長:素晴らしいと思います。

両社に共通しているのは、それぞれの技術を最大限に活かし、お客様の課題解決にダイレクトに向き合うことで、ものづくりの新たな価値を共に創り出そうという姿勢です。

難加工に対応できる会社が減るからこそ、「一緒にシェアを広げられる」

― 今後、森井鉄工所に期待することを教えてください。

熊谷社長:鉄全体の需要だけを見れば、今後縮小する部分もあるかもしれません。
ただ一方で、難しい加工に対応できる会社は減っていくと思います。だからこそ、本当に技術を持っている会社には仕事が集まる。
僕は、森井鉄工所さんとは特殊鋼加工の分野で一緒にシェアを広げられると思っています。
今までは材料支給での曲げ専業が中心だったかもしれません。そこから材料を仕入れて、曲げて、溶接して、構造物として納める。さらに将来的には据え付けまで一括で対応する。
そうした高付加価値な仕事を、一緒に増やしていきたいですね。

クマガイ特殊鋼様の特殊鋼調達力と高精度な切断技術、森井鉄工所の難加工に対応する曲げ技術。両社の連携によって、これまで対応先が見つからなかった特殊鋼加工にも、新たな可能性が広がっています。

取材を終えて

今回のインタビューで印象に残ったのは、クマガイ特殊鋼様の高い専門性と、110年以上の歴史にとどまらず、次のものづくりの形を考え続ける姿勢でした。
特殊鋼を調達して販売するだけではなく、高精度に切断し、加工会社の技術をつなぎ、お客様が必要とする部品や製品まで仕上げて届ける。
営業部長として市場やお客様のニーズを見る奥村様、特殊鋼販売技士1級の知識を生かして材料と加工をつなぐ徳永様、そして新たな高付加価値モデルを描く熊谷社長。3名のお話から、クマガイ特殊鋼様の強さは、長年培ってきた特殊鋼の調達力だけではないことが伝わってきました。

そのクマガイ特殊鋼様が、Web上の加工事例を見て「ここならできそうだ」と感じたのが森井鉄工所でした。
実際に相談すると、難加工や材料特性についての話が早く、森井社長の実直な姿勢に「この人ができないと言ったら、本当にできないんだろうな」と感じたといいます。
大きなプレス機があるだけでは、特殊鋼を狙った形状に曲げることはできません。材料の特性や割れのリスクを見極め、スプリングバックを考慮しながら、金型と加工条件を選ぶ。森井鉄工所が積み重ねてきた経験が、特殊鋼のプロからの信頼につながっています。
クマガイ特殊鋼様の材料調達力と切断技術、森井鉄工所の曲げ技術。両社の連携によって、特殊鋼加工の可能性はさらに広がっていきます。

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