厚板曲げの難加工に応える|80本以上の金型と約1時間の交換体制
厚板や高張力鋼板、耐摩耗鋼板の曲げ加工について、森井鉄工所には次のようなご相談が寄せられます。
「この材質、この板厚、この大きさでは加工が難しいと言われた」
「必要な曲げ形状に対応できる設備や金型がないと言われた」
「加工方法を検討してもらえる会社が見つからない」
厚板曲げの加工可否は、プレス機の能力だけで決まるものではありません。材質や板厚、曲げR、製品形状に合った金型を保有し、必要なタイミングで柔軟に交換できるかどうかも重要です。
森井鉄工所では、小型から大型まで、分割したものを含めて80本以上の金型を保有しています。1200tプレスの上下金型も約1時間で交換できるため、多種多様な厚板曲げに対応できます。
この記事では、厚板曲げにおける金型選定の重要性と、豊富な金型や交換体制が加工の可能性をどのように広げるのかを解説します。
厚板曲げでは金型選定が重要になる
プレスによる曲げ加工では、材料を上から押す上型と、下から受ける下型を組み合わせて使用します。
同じ板厚であっても、材質や曲げ角度、曲げR、製品形状によって適した金型は異なります。特に高張力鋼板や耐摩耗鋼板では、同じ板厚や曲げ長さでも、SS400とは必要なプレス力や適切な下型のV幅が異なります。そのため、材質を含めた加工条件に合う金型選定が欠かせません。
1200tプレスの能力に余裕があっても、適切な金型がなければ曲げられない場合があります。反対に、V幅や上型の形状を見直すことで、これまで難しいと判断されていた加工に対応できる可能性もあります。
厚板曲げでは、プレス機の大きさだけでなく、どの金型を選び、どのように使い分けるかが加工可否を左右します。
「対応できる金型がない」と断られる理由
大型プレスで使用する金型の中には非常に重いものもあり、人の手だけでは交換が難しい場合があります。そのため、重量のある金型はクレーンで吊り上げ、プレスへ移動させてセットします。
重量のある金型は、設備配置や交換方法によって、移動や位置合わせに時間がかかることがあります。そのため、普段とは異なるV幅を使用する少量加工や、1回限りの特殊形状のために金型を交換することが難しいケースがあります。
また、加工条件に合う金型を保有していなければ、専用金型の製作が必要です。専用金型には製作費用と納期がかかるため、数量や予算、希望納期によっては、加工を引き受けることが難しくなります。
つまり、「プレスの力が足りない」のではなく、「適切な金型がない」「金型を交換する体制が整っていない」という理由で断られることもあるのです。
20〜30年かけて揃えた80本以上の金型
森井鉄工所では、小型から大型まで、分割して数えると80本以上の金型を保有しています。
これらの金型は、短期間で一度に購入したものではありません。20〜30年をかけ、さまざまな加工依頼に応えるために少しずつ揃えてきました。
森井鉄工所が手掛けるのは、同じ製品を繰り返し製造する量産加工だけではありません。材質や板厚、長さ、曲げR、形状など、一件ごとに条件の異なる仕事が数多くあります。
保有する金型には、上型と下型のほか、手で持てるほどの小型金型から、大型プレスで使用する重量のある金型まで、さまざまな大きさと形状があります。
長尺の曲げ加工では、同じ形状・V幅の分割金型を複数本並べ、必要な曲げ長さになるよう組み合わせて使用します。例えば、6m級の金型を8分割したものは、1本あたり約80cmです。加工する製品の長さに応じて使用する本数を調整できるため、短い製品から長尺品まで柔軟に対応できます。


分割金型は、単に長さを延ばすためだけのものではありません。製品の材質や板厚、曲げR、曲げ長さに合わせて、適切な形状とV幅の金型を選び、必要な本数を組み合わせます。
こうした長年の蓄積があるからこそ、高張力鋼板や耐摩耗鋼板など、材質や板厚に応じて通常とは異なるV幅が必要になる加工にも柔軟に対応できます。
【加工事例】約25年前に製作した金型を点検し、試供品で仕上がりを確認したうえで、再び加工に使用したケースです。
既存の金型で対応できれば、専用金型を新たに製作する費用や時間を抑えられる可能性もあります。一方、保有する金型では対応できない場合には、数量や今後の継続性などを踏まえ、専用金型の製作も検討します。
【加工事例】既存の金型では対応が難しい形状に対し、製品に合わせた専用金型を製作して曲げ加工を行ったケースです。
1200tプレスの金型を約1時間で交換
森井鉄工所では、1200tプレスの上型と下型を両方交換する場合でも、作業時間は約1時間です。どちらか片方だけであれば、約30分で交換できます。
この交換スピードにより、加工内容に応じて1日に何度も金型を入れ替えることができます。
例えば、通常のV幅では必要なプレス力が大きすぎる場合には、より広いV幅の下型へ変更します。製品が金型へ干渉する場合には、上型の高さや形状を見直します。
加工条件に応じた金型交換を、特別な作業ではなく日常的な段取りとして行えることが、多品種の厚板曲げに対応できる理由です。
交換の速さを支える専用小型クレーンと金型交換用ローラー
大型プレスで使用する金型は、サイズや重量によって交換方法が異なります。人の手で扱えるものもありますが、重量のある金型はクレーンを使って移動させます。
森井鉄工所では、プレス機のそばに金型交換用クレーンを配置し、プレス側には金型交換用ローラーを設置しています。クレーンで金型を近くまで運び、ローラーを使ってスムーズに取り付け・取り外しができるため、金型交換にかかる移動や作業の負担を抑えられます。


こうした設備の工夫により、1200tプレスでも上下両方の金型を約1時間、片方だけであれば約30分で交換できます。加工内容に合わせて1日に何度も金型を変更できることが、多種多様な厚板曲げへの対応につながっています。
【設備紹介】1200tプレスをはじめ、森井鉄工所が保有するプレス機や曲げ加工設備をご紹介しています。

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「逃げ」のある金型で干渉を避ける
厚板曲げでは、完成後の形状だけでなく、曲げている途中に材料がどのように動くかまで考える必要があります。
例えばL字曲げで一方の立ち上がりが長い場合、曲げが進むにつれて長い側の板が上方向へ起き上がります。その途中で材料が上型やプレス本体にぶつかると、プレス能力に余裕があっても、それ以上曲げることはできません。この状態を「干渉」と呼びます。
コの字曲げでは、1回目の曲げで立ち上げた部分が、反対側を曲げる際に金型へ近づきます。底辺より立ち上がりが長い形状では、加工する順番を慎重に検討しなければ、先に曲げた部分が金型やプレス本体へ干渉することがあります。
【外部資料】2回以上の曲げ加工では、すでに曲げた部分と金型が干渉することがあります。株式会社アマダの技術資料では、製品と干渉しない断面形状のパンチを選び、曲げ順とあわせて検討する必要性が解説されています。
板金加工の基礎講座|ベンディング(曲げ)加工 Part 1
このような場合に検討するのが、立ち上がった材料をかわすための高さや空間を持つ「逃げ」のある金型です。
通常の金型では、立ち上がった部分が金型の側面などにぶつかる場合でも、逃げの形状が製品に合えば、その部分が通過できる空間を確保できます。その結果、材料の動きを妨げずに、所定の角度まで曲げられる可能性が広がります。
同じプレス機を使用しても、金型の高さや形状によって加工できる範囲は変わります。森井鉄工所では、完成形状だけを見るのではなく、曲げ途中の材料の動きや干渉の有無まで確認して金型を選定します。
【加工事例】底辺より立ち上がりが長いコの字形状に対し、材料の干渉を考慮して加工する順番を検討したケースです。
プレス能力と金型の工夫で加工の可能性を広げる
厚板曲げでは、プレス機の能力が高ければ、すべての加工に対応できるわけではありません。
必要なプレス力を抑えるV幅、指定された曲げRに対応する金型、製品の干渉を避ける高さや逃げを持った金型など、条件に合った選択が必要です。
【関連記事】下型のV幅を8Tから10Tへ広げることで、厚板曲げに必要なプレス力を抑える考え方を解説しています。
森井鉄工所では、1200tプレス、80本以上の金型、短時間で交換できる設備配置を組み合わせ、加工方法を検討しています。
「そのままでは難しい」という場合でも、金型の変更や加工順序の見直しによって、対応できる可能性があります。単に加工の可否を回答するのではなく、どの条件を変更すれば実現できるかまで考えてご提案します。
厚板や特殊形状の曲げ加工は森井鉄工所へご相談ください
厚板や特殊素材の曲げ加工では、プレス機の能力だけでなく、金型の選定と交換対応が加工可否を左右します。
森井鉄工所では、図面を確認し、材質、板厚、曲げ長さ、曲げR、加工途中の干渉などを踏まえて、使用する金型や加工手順を検討します。
「他社で対応できる金型がないと言われた」
「立ち上がりが長く、金型へ干渉してしまう」
「専用金型を製作せずに対応できるか確認したい」
このようなお悩みがありましたら、図面を添えてご相談ください。保有する金型とこれまでの加工経験をもとに、実現できる方法をご提案します。
【関連記事】厚板を金型に載せるために必要な「鼻の長さ」と、加工が難しくなる条件を解説しています。
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