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適切な金型選びで厚板曲げの可能性を広げる|V幅を8Tから10Tへ広げる理由

厚板やハイテン鋼、耐摩耗鋼板の曲げ加工について、森井鉄工所には次のようなご相談が寄せられます。

「加工会社から、機械の力が足りず曲げられないと言われた」
「同じ板厚でも、材質が変わると必要なプレス力は変わるのか」
「1200tプレスなら、どのような厚板でも曲げられるのか」

鉄板の曲げ加工に必要な力は、板厚だけで決まるものではありません。素材の強さ、板厚、曲げる長さ、使用する下金型のV幅など、複数の条件によって変わります。

この記事では、厚板曲げに必要なプレス力の考え方と、森井鉄工所が金型を調整して加工の可能性を広げる方法を解説します。

厚板や硬い素材ほど大きなプレス力が必要になる

鉄板に力を加えると、最初は力を取り除いたときに元の形へ戻ろうとします。さらに力を加え、元に戻らない永久変形が始まる境目が「降伏点」です。

曲げ加工では、材料に生じる応力が降伏点を超えるまで荷重を加える必要があります。そのため、次の条件になるほど必要なプレス力は大きくなります。

・素材の強度が高い
・板厚が厚い
・曲げる長さが長い

同じSS400でも、板厚が厚く、曲げ長さが長くなるほど大きな力が必要です。ハイテン鋼や耐摩耗鋼板などの硬い素材では、さらに高いプレス能力が求められます。

素材によって必要なプレス力は異なる

SS400を基準とした場合、森井鉄工所では必要なプレス力をおおむね次のように考えています。

素材SS400を基準とした必要プレス力の目安
SS400約1.0倍
ステンレス約1.1倍
高張力鋼板(ハイテン鋼)約1.1~1.2倍
耐摩耗鋼板(ABREXなど)約3倍

これらは代表的な目安です。実際の必要プレス力は、材質のグレード、板厚、曲げ長さ、曲げR、金型条件によって変わります。

特に耐摩耗鋼板は、SS400と同じ板厚や長さであっても、はるかに大きな力が必要になる場合があります。そのため、一般的なベンダーでは能力が足りず、加工を断られることもあります。

森井鉄工所では、SS400だけでなく、高張力鋼板や耐摩耗鋼板の曲げ加工にも対応しています。

耐摩耗鋼板の最小Rや圧延方向については、「耐摩耗鋼板の曲げ加工で割れないために」で詳しく解説しています。

1200tプレスでも曲げられる厚さと長さには限界がある

森井鉄工所では、最大1200tの大型プレスを保有しています。しかし、1200tの力があれば、どのような厚板や長尺材でも曲げられるわけではありません。

SS400の場合、通常条件における一つの限界目安が「板厚32mm・長さ6m」です。板厚40mmになると、通常のV幅では同じ6mの加工が厳しくなり、長さを5m程度まで短くする必要がある場合があります。

一方、曲げる長さが短ければ、さらに厚い材料にも対応できます。森井鉄工所では、SS400・板厚60mm・φ1468×810Hの円筒曲げの実績や、板厚12mmのSS400では、最大長さ6790mmの加工実績もあります。

このように、厚板曲げの限界は板厚だけでは決まりません。材質、曲げ長さ、製品形状、金型の組み合わせによって、加工できる範囲は大きく変わります。

森井鉄工所の1200tプレス機など保有する設備はこちらのページからご覧ください▼

森井鉄工所の設備

V幅を広げると必要なプレス力を抑えられる

通常のベンダー曲げでは、板厚の約8倍を目安としたV幅の下金型を使用します。

しかし、通常のV幅ではプレス力が足りない場合、森井鉄工所ではV幅を板厚の10倍程度まで広げる方法を検討します。

ベンダー曲げにおけるV幅を10倍に広げる説明画像

V幅を広げると、鉄板を支える左右の支点間が広くなります。てこの原理により、材料の降伏点を超えて曲げるために必要なプレス力を小さくできるためです。

※曲げ加工に必要な加圧力は、曲げ長さに比例し、板厚の2乗と材料の引張強さに比例する一方、下金型のV幅には反比例します。詳しい計算方法は、株式会社アマダの「板金加工の基礎講座|ベンディング(曲げ)加工 Part 2(https://www.sheetmetal.amada.co.jp/column/course/basis11/)」をご覧ください。

板厚40mm×長さ6m|V幅320mmから400mmへ広げる計算例

SS400・板厚40mm・長さ6mを曲げる場合、通常の8TではV幅が320mmになります。この条件では、1200tプレスでも必要な力が大きく、加工が難しくなります。そこで、V幅を10Tに相当する400mmまで広げます。V幅を320mmから400mmへ広げると、ほかの条件が同じであれば、必要プレス力は計算上約20%低減します。森井鉄工所では、この変化を「必要な力が100から80になるイメージ」として捉えています。

計算上は、通常のV幅では難しい板厚40mm・長さ6mでも、V幅を320mmから400mmへ広げることで、1200tプレスで曲げられる可能性が生まれます。ただし、これは過去の特定製品における実績ではなく、V幅と必要プレス力の関係を示す計算上の例です。実際の加工可否は、材質や形状、要求される曲げRなどを含めて判断します。

V幅を広げると曲げRも大きくなる

V幅を広げる方法には条件があります。

下金型のV幅を広げるほど、完成後の曲げRも大きくなります。図面で小さなRが指定されている場合は、必要プレス力を抑えるために自由にV幅を広げられるとは限りません。

加工できるかどうかは、「1200tで足りるか」だけでは決まりません。必要なプレス力と、完成後の形状を両立できる金型を選ぶことが重要です。V幅を変更すると、曲げRだけでなく、金型に材料を載せるために必要な端(ハナ)寸法にも影響します。曲げRと鼻寸法の考え方については、以下の記事で詳しく解説しています。

1200tプレスだけでなく、豊富な金型と交換の速さが強み

厚板曲げでは、設備のプレス能力と同じくらい、金型の種類と交換のしやすさが重要です。

大型設備では金型交換に数時間を要する場合があり、普段とは異なるV幅を使う少量加工や特殊な厚板加工には対応しにくいことがあります。

森井鉄工所では、さまざまなV幅の金型を保有し、約1時間で交換できます。そのため、通常のV幅では力が足りない場合にも、条件に合わせて金型を変更し、加工できる方法を検討できます。

1200tプレスの能力に加え、豊富な金型と柔軟な段取りがあることが、厚板の難加工に対応できる理由です。

金型
森井鉄工所の豊富な金型

長年の経験から加工可否を判断する

厚板曲げの加工可否は、計算だけでは判断しきれないことがあります。

森井鉄工所では、これまで扱ってきた材質、板厚、曲げ長さ、V幅、曲げRなどの経験から、図面を見た段階で加工の可能性を検討します。

「そのままでは難しい」
「曲げ長さを短くすれば対応できる」
「V幅を広げ、Rを変更できれば加工できる」

このように、できる・できないだけでなく、どの条件を変更すれば加工できるかまでご提案します。

長尺・厚板曲げで精度を出すための考え方や、試し曲げ、スプリングバック対策については、こちらの記事でも詳しくご紹介しています。

厚板の曲げ加工でお困りなら森井鉄工所へご相談ください

厚板や硬い素材の曲げ加工では、素材の強さ、板厚、曲げ長さ、金型のV幅によって必要なプレス力が変わります。

大型プレスの能力が足りないように見える加工でも、V幅を調整することで必要な力を抑え、加工できる場合があります。ただし、曲げRが大きくなるため、図面条件との調整が必要です。

森井鉄工所では、1200tプレスと豊富な金型、これまでの加工経験をもとに、図面を見た段階で加工可否を判断します。

「他社でプレス力が足りないと言われた」
「厚板や耐摩耗鋼板を長尺で曲げたい」
「Rを変更すれば加工できるか確認したい」

このようなお悩みがありましたら、図面を添えてご相談ください。現在の条件では難しい場合も、加工可能な寸法や金型条件を含めてご提案します。