耐摩耗鋼板の曲げ加工で割れないために|最小R・圧延方向・端(ハナ)の長さを解説

耐摩耗鋼板(ABREX・HARDOX)は、高い耐摩耗性と強度を持つことから、サイクロン設備など、摩耗しやすい設備で多く採用されています。
近年では「軽量化しながら強度を確保したい」というニーズも増え、高張力鋼板の代わりに耐摩耗鋼板を採用するケースも少なくありません。
一方で、
「SS400と同じ感覚で曲げられると思っていた」
「図面を作成したが加工できないと言われた」
「最小Rや端寸法が分からない」
というご相談も多くいただきます。
耐摩耗鋼板は、一般的なSS400とは曲げ加工の条件が大きく異なります。
この記事では、耐摩耗鋼板の曲げ加工で割れを防ぐために知っておきたい「最小R」「圧延方向」「端寸法」の考え方について、分かりやすく解説します。
耐摩耗鋼板の採用が増えている理由
耐摩耗鋼板は、摩耗が激しい設備の寿命を延ばすことを目的に採用されることが多い材料です。
森井鉄工所でも、ABREXやHARDOXを使用した曲げ加工のご相談が年々増えています。
代表的な用途としては、
・サイクロンなどの集塵設備
・コンクリートミキサーなどのタンク内張り(ライニング)
・トラック荷台
・摩耗しやすい搬送設備
などがあります。
近年では「耐摩耗性」だけではなく、高い強度を活かして板厚を薄くし、設備全体の軽量化を図る目的で採用されるケースも増えています。
耐摩耗鋼板はSS400と同じ条件では曲げられません
SS400は、指定がなければ比較的小さなRでも曲げ加工できます。
一方、耐摩耗鋼板とSS400の最も大きな違いは、「割れを防ぐための最小曲げRが存在すること」です。
耐摩耗鋼板は硬さが高いため、無理に小さなRで曲げると割れが発生する恐れがあります。
そのため、耐摩耗鋼板には「最小曲げR」を考慮した設計が必要です。
代表的な目安として、
・圧延方向と直角に曲げる場合 板厚の約3〜3.5倍
・圧延方向と平行に曲げる場合 板厚の約5倍
程度の最小Rが必要とされています。
ただし、この数値は一般的な目安であり、実際の最小Rは材質やメーカー、グレードによって異なります。
設計時には各メーカーの技術資料を確認し、条件に応じたRを設定することが重要です。

圧延方向は設計だけでなく現場でも重要になります
耐摩耗鋼板では、圧延方向によって必要な最小Rが変わります。
理論上は、圧延方向を把握したうえで適切なRを設定すれば問題ありません。
しかし実際の加工では、設計どおりの圧延方向で材料が切断・搬入されるとは限りません。
実際の現場では、材料がどの向きで切断・搬入されるかを正確に管理することが難しいケースもあります。
そのため森井鉄工所では、お客様へ圧延方向を指定するのではなく、どの方向で材料が持ち込まれても安全に加工できるよう、最も厳しい条件を基準として加工条件を判断しています。
最小Rが大きくなると「端の長さ」も長く必要になります
耐摩耗鋼板では、最小Rだけを考慮すれば良いわけではありません。
最小Rが大きくなると、そのRに対応できる大きな下金型(V幅)を使用する必要があります。
下金型が大きくなると、L字曲げの短辺である「端」の長さも、それに合わせて長く確保しなければなりません。
図面上では十分な寸法に見えても、端寸法が不足していると金型に材料が載らず、物理的に曲げ加工ができないケースがあります。
耐摩耗鋼板では、「最小R」と「端寸法」は切り離して考えることができない重要なポイントです。

端寸法の考え方はSS400でも耐摩耗鋼板でも基本は同じです。詳しくはこちらの記事をご覧ください。
「厚板の曲げ加工で断られる理由とは?『端の長さ』が設計の成否を決めるポイントを解説」
森井鉄工所では図面を見た段階で加工可否を判断します
耐摩耗鋼板の曲げ加工では、最小R・圧延方向・端寸法をすべて考慮する必要があります。
しかし、設計段階ですべての条件を把握しながら図面を作成することは簡単ではありません。
森井鉄工所では、図面を確認した段階で加工条件を検討し、「加工できるか」「寸法変更が必要か」「どのように修正すれば加工できるか」をご提案しています。
また、圧延方向が不明な場合でも安全に加工できるよう、最も厳しい条件を前提として判断しているため、加工時のトラブルを防ぎながら安心してご依頼いただけます。
図面が完成してからだけでなく、設計段階でのご相談にも対応していますので、お気軽にお問い合わせください。
SS400と耐摩耗鋼板の違い
| 比較項目 | SS400 | 耐摩耗鋼板(ABREX・HARDOX) |
|---|---|---|
| 最小曲げR | 成り行きRでも加工しやすい | 最小Rを考慮した設計が必要 |
| 圧延方向 | 通常はあまり意識しない | 曲げ方向によって必要Rが変わる |
| 曲げ加工 | 比較的自由に曲げられる | R不足では割れの原因となる |
| 端寸法 | 比較的自由に設計できる | Rが大きくなるため長く必要 |
| 設計時のポイント | 一般的な曲げ条件で対応しやすい | 最小R・圧延方向・端寸法を考慮する必要がある |
耐摩耗鋼板の曲げ加工なら森井鉄工所へご相談ください
耐摩耗鋼板は、高い耐摩耗性と強度を持つ優れた材料ですが、SS400と同じ条件では曲げ加工できません。
最小Rや圧延方向、端寸法を考慮した設計が必要となるため、設計段階から加工会社へ相談することが重要です。
森井鉄工所では、ABREX・HARDOXをはじめとした耐摩耗鋼板の曲げ加工実績が多数あります。
「この図面で加工できるだろうか」
「他社では難しいと言われた」
「耐摩耗鋼板へ変更したいが設計条件が分からない」
そのようなお悩みがありましたら、お気軽にご相談ください。図面を確認し、加工可否や設計上のポイントも含めてご提案いたします。
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