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金属加工現場で求められる安全対策の重要性

金属加工の現場では、作業者がさまざまなリスクに直面することがあります。

どんな作業現場でも危険が潜んでいますが、金属加工の現場にはどのような問題があるでしょうか。

本記事では、金属加工の現場作業におけるリスクと安全対策について詳しく解説します。

金属加工の種類

金属加工は主に「金属の形を変える加工」と「金属の性質を変える加工」の2つに大別できます。

それぞれリスクが異なるので、まずはこの両者の違いについて解説します。

形状変化を目的とした金属加工

形状変化を目的とした金属加工では、素材の物理的な形状を変更する作業が中心となります。

主に以下の三つが挙げられます。

機械加工

機械加工は、金属素材を様々な形状に仕上げるために行われる加工です。

切削加工では旋盤やフライス盤などの機械を使用して、金属を削り取っていきます。

研削加工は研削砥石を用いて金属表面を磨きます。

塑性加工

塑性加工は、金属に外力を加えて形状を変えるために行われる加工です。

主にプレス加工と鍛造があります。

プレス加工は、金型を用いて金属板を押し出すことで曲げや穴あけなどを行います。

鍛造はハンマーやプレス機を使用して金属を叩き、圧力を加えることで形状を変えていきます。

鋳造

鋳造は、金属を溶かして型に流し込み、冷却・固化させて特定の形状を作る方法です。

鋳造には、砂型鋳造や金属型鋳造などの種類があります。

性質を変える金属加工

性質を変える金属加工は、金属の内部組織や表面特性を改質することです。

主に熱処理と表面処理が挙げられます。

熱処理

熱処理は、金属を高温に加熱したあとに冷却することで内部組織を変化させ、素材の強度や耐摩耗性を向上させる加工です。

代表的な熱処理には焼入れ、焼戻し、アニーリング(焼なまし)があります。

焼戻しは、焼入れ後の金属を再加熱し、靭性を向上させる処理です。

硬くなりすぎた金属の脆さを軽減し、使用中の割れやすさを防ぎます。

アニーリングは、金属をゆっくりと冷却することで内部応力を除去し、加工性を改善します。

表面処理

表面処理は、金属の表面に特定のコーティングを施すことで耐食性や耐摩耗性、美観を向上させる加工です。

主な技術にはメッキ、リン酸塩処理、クロメート処理があります。

メッキでは、金属の表面に別の金属(例:亜鉛メッキ、ニッケルメッキ)を薄く被覆し、耐食性や装飾性を向上させます。

リン酸塩処理は金属表面にリン酸塩皮膜を生成させ、塗装の下地処理や耐食性の向上に利用されます。

クロメート処理は、金属の表面にクロム化合物の薄い皮膜を形成し、耐食性や耐摩耗性を高めます。

金属加工現場に潜む主なリスク

金属加工現場には、多様な環境要因が潜んでいます。

形状変化工程と性質変化工程では異なる危険が存在するので、それぞれのリスクと対策を見てみましょう。

形状変化を目的とした金属加工によくあるリスク

切削・研削などの機械加工や鋳造では、加工中に発生する細かな金属粒子や切削油を吸い込むことで、健康を損なう危険性があります。

飛び散った金属粒子や火花が目に入ると、視力障害や損傷を引き起こしてしまいます。

鋳造現場では高温の金属や溶融した金属によって火傷を負う危険性があります。

また、機械巻き込み事故も深刻な問題です。

動作中の機械に手や衣類が巻き込まれることで、重篤なけがや事故を引き起こす可能性があります。

機械加工の現場では、長時間にわたって大きな騒音や振動にさらされることがあり、聴力の低下や慢性的な疲労が蓄積しやすくなります。

対策

防塵マスクや保護メガネの着用
耐熱手袋の使用
機械安全装置の導入
防音設備の設置
定期的な機械点検

性質を変える金属加工によくあるリスク

熱処理工程では高温炉や加熱部品への接触事故が頻発し、表面処理では薬品や溶剤の吸引、皮膚・粘膜への刺激が懸念されます。

また、化学物質関連作業では換気不良による有害ガスの曝露リスクが高まります。

対策

防護具(防毒マスク、保護服)の着用
十分な換気設備の整備
化学物質の安全な取り扱いと保管
定期的な安全教育の実施

作業別の災害例

金属加工現場で適切な安全対策が講じられていない場合、さまざまな災害が発生する可能性があります。

以下に、作業ごとに想定される災害例を挙げていきます。

機械準備作業

加工物の固定中の挟まれ事故
面盤固定時の手挟み事故
加工段取り中の不安定による挟み込み
クレーン吊り上げ作業中の制御喪失
重量物のチャッキング時の腰痛発生

クレーン作業

吊具・ワイヤロープの破断による落下事故
重量誤算によるワイヤロープ破断
反転作業時の品物振動による衝突事故
大型製品の玉掛け作業中のワイヤロープずれ
玉掛け中のワイヤロープ操作ミス
品物からの転落事故

手動工具作業

ハンドドリル使用時の手首負傷
グラインダーによる目の負傷
グラインダー使用後の火傷事故

ガス溶接作業

ガスボンベが倒れて手を挟み裂傷を負う

参考:厚生労働省|金属加工作業におけるリスクアセスメントのすすめ方

まとめ

金属加工現場では、形状変化工程と性質変化工程それぞれに特有のリスクが存在します。

安全対策を実施することで、金属加工現場における事故発生のリスクを減少できます。

金属加工に携わる方は、日々の作業において安全意識を忘れず、リスクを最小限に抑える取り組みを続けていきましょう。