銅の特徴と曲げ加工で起こりやすいトラブル

銅は優れた導電性や熱伝導性から、さまざまな産業で広く利用されている金属です。
銅の曲げ加工は、他の金属に比べて難易度が高いことが知られています。
本記事では、銅の曲げ加工においてよく発生するトラブルについて詳しく解説していきます。
銅の特徴
銅は、以下のような特徴を持っています。
電気伝導率が高い
銅は、金属の中で銀に次いで電気伝導率が高く、電気を効率的に伝えることができます。
また電気抵抗が低いため、電力損失を最小限に抑えられます。
電気を通す電線やケーブル、電子部品、基板などに広く利用されています。
熱伝導率が高い
銅は、熱伝導率も非常に高い金属です。
熱を素早く伝えることが重要となる放熱フィン、熱交換器など、熱管理が重要な分野で広く使用されています。
電子機器の冷却や空調設備、熱交換器など様々な用途で銅が役立っています。
優れた加工性
銅は、展延性と延性に優れた金属です。
圧延、引き抜き、曲げ、深絞りなどの塑性加工が容易に行えます。
合金化することで、強度や硬度を向上させることも可能です。
銅の曲げ加工が難しい理由
銅は非常に柔らかい金属であることから、曲げ加工時にさまざまなトラブルが発生しやすいです。
ここでは、銅の曲げ加工が難しい理由と代表的なトラブルについて説明します。
柔らかさゆえに寸法不良が起きやすい
銅の柔らかさは加工性の高さを示すものでもありますが、その反面、曲げ加工後の寸法が意図した通りにならないことがよくあります。
特に、曲げ後に形状が崩れたり、正確な寸法が維持できなかったりすることが多いです。
加工中に銅が押しつぶされる、または引っ張られる力に過敏に反応し、最終的に寸法不良を引き起こします。
スプリングバックによる形状不良
スプリングバックとは、金属を曲げた際に部分的に元の形に戻ろうとする現象です。
銅の場合、このスプリングバックが顕著に現れることがあり、曲げ加工の後に意図した形状に仕上がらないことがあります。
スプリングバックが発生する理由は、銅の独特な弾塑性特性によるものです。
銅は柔らかく加工しやすい一方で、加工時に生じた内部応力が解放されることで、部分的に元の形状に戻ろうとする力が働きます。
この特性が、加工後の形状変化につながるのです。
亀裂や割れが発生しやすい
銅は柔軟性が高い一方で、曲げる際に過度な力が加わると亀裂や割れが発生しやすくなります。
特に、急角度での曲げ加工や、材料が疲労している場合にこの問題が発生しやすいです。
亀裂や割れが発生する主な原因は、曲げ半径が小さすぎたり、加工速度が速すぎたりすることです。
また、材料自体の品質や事前の加工によっても、亀裂のリスクが高まることがあります。
銅の曲げ加工で品質を維持するポイント
銅の曲げ加工において、品質を維持するためのポイントがあります。
適切な加工手順と事前の調整を行うことで、寸法不良やスプリングバック、亀裂などのトラブルを最小限に抑えられます。
ここでは、銅の曲げ加工で押さえておきたい重要なポイントについて説明します。
圧延方向を考慮した曲げ加工
銅は圧延方向によって、曲げ加工時の変形のしやすさが異なります。
圧延方向は材料の製造工程で生じ、加工方向を選択する上で重要な要素です。
圧延方向に沿って曲げ加工を行うと、亀裂や割れが発生しにくくなります。
一方、圧延方向に対して垂直に曲げ加工を行うと、亀裂や割れが発生しやすくなります。
適切な方向で曲げ加工を行うことで、銅の柔らかさを活かしながら、形状の安定性を確保できます。
金型の精度を高める
金型の精度は、銅の曲げ加工の成否に直接影響を与えます。
精度の低い金型を使用すると、加工中に材料が思わぬ方向に変形しやすくなり、寸法不良や形状不良が発生する原因となります。
また、金型の表面状態も重要です。
表面が粗いと材料に傷がついたり、余分な抵抗が生じて亀裂の原因になることがあります。
加工前の試験と調整が重要
銅の曲げ加工を行う前に、試験加工を実施することは非常に重要です。
試験によって、実際にどのような形状や寸法のズレが発生するかを事前に確認できます。
また、スプリングバックや亀裂の発生もこの段階で予測し、適切な対策を講じることが可能です。
たとえば、加工速度や金型の圧力、曲げ半径などを微調整することで、トラブルの発生を抑えられます。
まとめ
銅の曲げ加工は他の金属加工とは異なる難しさがあります。
材料の特性に応じた加工方向の選定や、金型の精度の向上、加工前の試験を徹底することで、寸法不良やスプリングバック、亀裂などの問題を回避し、安定した製品を作り上げられます。
森井鉄工所では、銅の曲げ加工についても承っております。
他社様で難しいと断られたケースであってもぜひ一度お問合せください。