平鋼と鋼板の違いとは?基本性質と加工性を徹底比較
平鋼や鋼板は鋼材としてよく用いられていますが、その違いについて疑問に思っている人もいるでしょう。
鋼材はJIS規格などによって性状や形状、組成などの規格が定められています。
この記事では平鋼と鋼板の違いを規格や性質の観点から解説します。
平鋼と鋼板の違い
平鋼と鋼板はどちらも板状の鋼材ですが、製品として仕上げるときの加工方法に違いがあります。
まずは平鋼と鋼板の基本的な違いを見ていきましょう。
平鋼とは
平鋼とは、長方形の断面の4つの面を熱間圧延して製造される鋼材です。
FB、平鉄、フラットバーとも呼ばれることもあります。
SS400、SM材、SN材などのさまざまな素材を使用可能で、主に形状を示す言葉になっています。
平鋼の種類
平鋼は一般平鋼と異形平鋼に分類されます。
一般平鋼は板厚、幅、長さが規格化されており、JIS G 0204では長方形の断面をした棒鋼で板厚は 5mm 以上、幅は500mm を超えないものと定められています。
一方、異形平鋼は相対する短辺が並行ではなく、六角形や八角形などの特殊な形状をしています。
用途に応じて使い分けることで、より適した鋼材として活用されています。
鋼板とは
鋼板は熱で板状に圧延した鋼材です。
平鋼と異なり、4面全てを圧延するわけではありません。
加工方法により熱延鋼板と冷延鋼板に分類され、広義にはコイル状の鋼帯も含みます。
平鋼と鋼板の分類
平鋼と鋼板はともに、幅や厚さ、形状によって分類されます。
平鋼は一般平鋼と異形平鋼に分類でき、さらに一般平鋼は幅によって区別されます。
幅が180mm以下の場合は平鋼、180mmを超える場合には広幅平鋼と呼ばれるのが一般的です。
一方、鋼板は厚さによって厚鋼板と薄鋼板に分類されます。
厚さが6mm以上の鋼板は厚板、3mm以上6mm未満は中板と呼ばれ、まとめて厚鋼板と呼ばれます。
厚さが3mm未満の場合には、薄鋼板または薄板と呼ばれるのが一般的です。
平鋼と鋼板の性質の違いを比較
平鋼と鋼板は性質に違いがあるため、使用する際には比較して検討することが重要です。
ここでは平鋼と鋼板の違いがわかる6つのポイントを解説します。
仕分けのしやすさ
平鋼と鋼板で仕分け作業をしやすいのは平鋼です。
鋼板の場合、レーザー切断や溶断によって切り出し、それぞれの部材を集めて仕分ける必要が生じます。
基本の仕様で成形されている平鋼の方が手間がかかりません。
反りや歪みの発生しやすさ
鋼板は切り出しの際に、反りや歪みが生じやすいのがデメリットです。
レーザーなどで切断すると、熱応力によって切断面近くに反りや歪みが生じる可能性があります。
一方、平鋼では幅が定められた製品を入手できるため、熱のかかる切断による反りや歪みのリスクがありません。
表面・側面の状態
表面や側面の状態は、平鋼と鋼板で異なります。
側面は圧延処理されている平鋼の方が滑らかです。
表面については、平鋼と鋼板のどちらも滑らかに仕上げられています。
表面や側面をそのまま使用する場合は、最終製品のデザインに合わせて選ぶことで製造効率が向上します。
加工方法
平鋼と鋼板の加工方法に大きな違いはありません。
切断、曲げ加工、穴あけ加工、メッキ、ショットブラストなど、さまざまな加工が可能です。
素材によって適用できる加工方法や加工の難易度は異なりますが、基本的に平鋼でも鋼板でも同じ加工ができます。
加工工数
加工工数は、平鋼の方が少なくて済む可能性があります。
最終製品に必要なサイズの平鋼を調達すれば、切り出しの工程が不要になります。
異形平鋼ではあらかじめ曲げられていたり、特殊な形状に成形されていたりするので、最終製品に合えば加工プロセスを大幅に削減できます。
大量生産の際に工数を減らすには平鋼が適していますが、オーダーメイドの場合には鋼板の方が柔軟性が高いため、かえって工数が少なくて済む可能性があります。
加工の再現性
同じ製品を生産する際には加工の再現性が重要です。
平鋼では製品化されている鋼材を調達することで加工内容を減らせるため、再現性の問題が起こりにくくなります。
鋼板の場合も製造プロセスを確立すれば、安定して同じ製品を作り上げることが可能です。
ただし、再現性を考えるときには、鋼板の方が加工の技術的要求が大きいため注意が必要です。
まとめ
平鋼と鋼板は、圧延をしている面が違います。
平鋼では4面を圧延しているので、側面も滑らかに成形されています。
厚さだけでなく幅も定型化して製品にされているため、同じ幅の鋼材を手に入れられるのが魅力です。
鋼板では板材の場合には厚さだけ制御されていて、側面の圧延は行われていません。
切り出しをして自由なサイズにして製品を作れます。
平鋼も鋼板も一長一短なので、用途に応じて適切な鋼材を選ぶようにしましょう。