鉄板の反り・ゆがみが発生する原因と直し方を解説
鉄板の加工をした後に、反りやゆがみが発生して矯正しなければならない場合があります。
発生した反りや、ゆがみの状態によって適切な直し方をすることが重要です。
この記事では、鉄板に反りやゆがみが発生する原因と直し方、トラブルが起こりやすい加工方法も紹介します。
鉄板の反りやゆがみが発生する原因
鉄板の加工後に反りやゆがみが生じる主な原因は「残留応力」です。
残留応力とは、鉄板の材料内部で働いている静的な力を指します。
金属の加工時には外力を加えますが、外力を取り除いた後も材料内部で残留応力が働き続けると、加工後に鉄板が変形することがあります。
加工プロセスの中で残留応力を考慮しないと、反りやゆがみが発生する可能性が高くなります。
鉄板の反りやゆがみが起こりやすい加工方法
鉄板の反りやゆがみの発生しやすさは、加工方法によって異なります。
ここでは、反りやゆがみが起こりやすい加工方法の特徴を紹介します。
硬い鉄板の加工
硬質の鉄板を加工するときには残留応力が残りやすく、反りやゆがみが起こる可能性が高くなります。
硬い鉄板は曲げや切削による加工時にかかる負荷が大きく、応力が大きくなるためです。
薄い鉄板の加工
薄い鉄板の加工では、特に反りが起こりやすくなります。
鉄板が薄いほど強度が低下し、弱い残留応力でも曲がりやすくなるからです。
例えば切削加工をするときには固定具を使用しますが、外した途端に反ってしまうこともあります。
熱伝導率の低い鉄板の加工
ステンレスのように熱伝導率が低い鉄板の切削加工では、反りやゆがみが発生しやすくなります。
加工によって発生した熱によって素材が膨張し、冷却される際に応力が発生するからです。
熱伝導率が高い金属では熱が速やかに拡散するため、温度変化による影響が少なくなります。
しかし、熱伝導率が低い金属では加工熱によって残留応力の影響が発生しやすく、加工後に変形するリスクが高くなります。
溶接加工
溶接加工はゆがみが発生しやすい加工方法です。
溶接では鉄板などの金属素材の一部を加熱して溶融させ、別の金属素材と接続します。
局所的な熱によって膨張が起こり、素材にかかる応力が部分的に変化します。
残留応力の影響だけでなく、熱変化によってゆがみが生じることも多いので、高度な技術が必要な加工です。
鋳造
鋳造による鉄板の製造時には、冷却の仕方によって反りやゆがみが発生する可能性があります。
全体を均一に冷却すれば膨張率が一定になり、平らな鉄板にすることが可能です。
しかし、鉄板の厚みの違いや表面と内部の温度差によって冷却速度に違いが生じます。
冷却する過程で残留応力が働き、これが反りやゆがみを引き起こす原因となります。
鉄板の反りやゆがみの効果的な直し方
鉄板の反りやゆがみは、加工によって矯正可能です。
ここでは、鉄板の反りやゆがみの直し方としてよく用いられている3つの方法を紹介します。
プレス矯正
プレス矯正は、厚みのある鉄板の反りやゆがみを直すために一般的に用いられる方法です。
油圧プレスを使用して、平らな鉄板に加工し直します。
プレス矯正は鉄板だけでなく他の金属板にも適用でき、厚みのある鉄板や硬度の高い鋼材でも矯正できる汎用性の高い方法です。
バッチ式で処理する必要はありますが、技術力によって平らな鉄板だけでなく、湾曲した鉄板にも仕上げることが可能です。
ロール矯正(レベラー矯正)
ロール矯正はレベラー矯正とも呼ばれている方法で、ローラーレベラーを使用して鉄板の反りやゆがみを矯正します。
大きなひずみが生じたときなどに、大まかに修正するのに適している直し方です。
例えば、薄い鉄板の反りやゆがみの直し方としてよく用いられています。
レベラーは自動処理によって連続的に加工しやすいので、規則的な反りが発生した大きな鉄板を修正するときに適しています。
マニュアル矯正
マニュアル矯正は、鉄板の反りやゆがみを個々に職人がチェックして手作業で修正する直し方です。
大きく曲がってしまった硬い鉄板でも、薄くて加工が難しい鉄板でもマニュアル矯正なら対応可能です。
プレス矯正やロール矯正による自動化が難しいときにマニュアル矯正をします。
当社における鉄板の反り・歪みの矯正事例
まとめ
鉄板は、加工後の残留応力によって反りやゆがみが発生する場合があります。
加工のプロセスで残留応力の影響を加味して設計することが重要ですが、もし鉄板に反りやゆがみが生じたとしても矯正ができます。
ロール矯正は簡便ですが適用できる鉄板が限られます。プレス矯正なら広範囲の鉄板に対して対応可能です。
どちらの方法でも修正が難しいときには、職人による手作業で対応できます。
当社は鉄板の反りやゆがみの直し方を熟知していますので、お困りの際にはぜひ気軽にご相談ください。