曲げ応力とは?曲げ加工で重要な力の基本を紹介
曲げ応力とは、金属素材の曲げ加工を行う際に重要なパラメーターの一つです。
理想の形に素材を曲げるためには、曲げ応力を考慮して加工する必要があります。
この記事では、曲げ応力とは何かを詳しくまとめました。
曲げ応力と曲げ加工の関係について詳しく見ていきましょう。
曲げ応力とは
曲げ応力とは、素材に対して曲げモーメント(物体に曲げを引き起こす力のこと)を加えたときに内部から発生する抵抗力のことです。
曲げ応力が高い素材ほど、曲げ加工に対して抵抗が大きくなります。
また、曲げ応力は素材の種類や厚さなどによって異なります。
応力とは
応力とは、外力を加えたときに素材の内部に発生する抵抗力のことです。
応力には、引張応力と圧縮応力の二種類があります。
素材を左右に引っ張っても形状が変化しないときは、内部から引張応力が働いていて形状の変化に抵抗している状態です。
同様に、素材に圧力をかけても形状が変化しない場合には、圧縮応力による抵抗が起きています。
曲げモーメントとは
曲げモーメントとは、素材を曲げるときに外力についてのベクトル量のことです。
素材を曲げるときには直線状の外力を加えるとは限らず、湾曲するように外力をかける場合もあります。
素材に対し、引張応力と圧縮応力が同時に発生することが多いのが特徴です。
せん断応力との違い
曲げ応力は、素材を曲げる外力によって発生する応力でしたが、金属加工ではせん断応力が発生する加工方法もあります。
せん断応力とは、素材にずれを発生させる外力によって生じる応力のことです。
例えば、長方形の鉄板の中心を固定して、両端に対して曲げモーメントをかけると鉄板は湾曲します。
しかし、長方形の鉄板の中心を固定せずに、両端に対して上下逆方向のモーメントをかけると、鉄板は平行四辺形に変形します。
前者で生じているのが曲げ応力、後者で生じているのがせん断応力です。
曲げ応力度とは
曲げ応力度とは、曲げモーメントを加えたときに素材の断面に発生する応力度です。
応力度とは応力の密度のことで、「外力÷断面積」によって計算できます。
これは、垂直応力度とも呼ばれる指標です。
曲げモーメントによって素材断面の軸方向に対して、面積あたりにかかる応力を示しています。
曲げ応力の計算式
曲げ応力の大きさは、計算によって導き出すことが可能です。
曲げ応力(σ)は以下の公式によって計算できます。
「σ=M/Z」
Mは曲げモーメント(kgf・cm)、Zは断面係数(cm³)です。
断面係数とは素材の断面についての性能を示す指標で、素材の形状によって異なります。
素材の断面は、長方形や楕円などのさまざまな形状があります。
形状によって応力の大きさには違いがあるため、断面係数によって補正をして曲げ応力を算出することが必要です。
曲げ加工における曲げ応力の重要性
曲げ応力は、曲げ加工の設計をする上で重要なパラメーターとなります。
ここでは、曲げ加工における曲げ応力で考慮すべき点を簡単に紹介します。
曲げ加工の設計と曲げ応力の関係
曲げ応力は、素材の種類や厚さなどによって変わります。
同じ素材の鉄板を曲げ加工するときでも、厚みが違うと曲げ応力が異なります。
加工のときにかける圧力や、加工のデザインを厚さに合わせて決めることが必要です。
また、仮に同じ厚さの金属板でも素材の種類によって曲げ応力が違うため、個別に曲げ加工を設計することが求められます。
素材の曲げ応力を理解することで、精密な曲げ加工ができます。
曲げ加工の残留応力によるスプリングバックの影響
曲げモーメントによって素材の曲げ加工をしたときには、残留応力による変形が起こる可能性があります。
素材が持っている弾性の影響によって、加工後に反発して元に戻るように変形する現象をスプリングバックと言います。
曲げ加工による残留応力が大きい素材を使用するときには、このスプリングバックを考慮した加工設計が必要になります。
スプリングバックの程度は曲げ応力によって異なるので、素材ごとに最終形を考えてデザインすることが重要です。
弊社の曲げ加工の事例
まとめ
曲げ応力とは、素材を曲げる力のモーメントに対して素材の内部で発生する応力です。
引張応力と圧縮応力の組み合わせによる複雑な応力が発生します。
素材の種類や厚さなどによって曲げ応力の特性が異なるため、曲げ加工の際には加工対象に合わせた設計が必要です。
弊社は、曲げ加工のプロフェッショナルとして、さまざまな素材の加工をしてきた経験があります。
ステンレスだけでなく、ハイテン材などの加工が難しい金属素材の曲げ加工にも対応できます。
曲げ加工による部品や製品の製造を検討されている際には、ぜひ弊社にご相談ください。