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金属の熱伝導率とは?高いときや低いことによるメリットを解説

金属の熱伝導率は、金属加工に大きな影響を与えます。

金属素材を選ぶ際や加工方法を決定する際に、熱伝導率は無視できません。

この記事では、熱伝導率の意味を詳しく紹介し、金属の熱伝導率の高低がもたらすメリットについても解説します。

金属の熱伝導率とは

金属の熱伝導率とは、金属がどれだけ効率的に熱を伝えることができるかを示す指標です。

熱は原子や分子の熱運動によって生み出され、金属などの物質を介して熱が移動する現象を熱伝導といいます。

熱伝導では、物質内で運動を通じてエネルギーを伝えるため、熱運動の特性によってその伝わり方が異なります。

金属板の熱伝導率は、板厚が1m、板の両面の温度差が1℃の条件で、単位面積(1㎡)あたりに伝わる熱量(W)として定義されている物理量です。

これは金属や他の物質ごとに異なる特性であり、熱伝導率が高いほど熱が効率的に伝わることを意味します。

熱伝導と熱伝達の違い

熱伝導と同様に、物質を介して熱が伝わる現象に熱伝達があります。

熱伝達は流体によって熱が伝わる現象です。

固体の金属で熱が伝わるときには、金属板を構成している金属原子が同じ位置に存在し、振動によって熱エネルギーを伝えます。

しかし、水や空気などの流体を介して熱が伝わる場合には、水分子や窒素分子、酸素分子などが移動しながら熱を伝えます。

熱伝達は、エアコンで部屋を暖めるときのように、空気などの流体によって熱を伝えます。

金属でも融解させたときには熱伝達の媒体になりますが、素材として固体になっている場合には熱伝導が起こります。

熱伝導と熱放射との違い

熱放射も熱を伝える現象として知られています。

熱放射は熱輻射とも呼ばれ、熱を伝える媒体が固体でも流体でもありません。

熱放射は、電磁波によって熱エネルギーを伝えます。

高温状態の物質からは、熱エネルギーが赤外線などの電磁波として放射されます。

太陽光によって温かいと感じるのは、熱放射による影響です。

常温の金属が熱放射をすることは基本的にありませんが、金属加工の際に溶接によって加熱したときや、加工熱が発生したときに熱輻射が起こる場合があります。

代表的な金属の熱伝導率

金属の熱伝導率は素材によって異なります。

ここでは代表的な金属の熱伝導率を表にまとめました。

※金属の純度による違いもあるので目安の数値です。

金属熱伝導率(W/m・K)
420
393
320
アルミニウム222
真鍮106
ニッケル91
73
チタン17
SUS43026
SUS30416
SUS30116

銀、銅、金、アルミニウムは熱伝導率が高い性質があります。

ステンレス(SUS)は金属の中では熱伝導率が低いですが、熱伝導率が約1のガラスや、約0.2の木材に比べると熱伝導率が高い素材です。

熱伝導率が高い金属のメリット

金属の熱伝導率が高いほど、熱が均一に伝わりやすいです。

熱が均一に伝わりやすいということは、大きな金属板の熱処理による加工をしやすくなります。

また熱伝導率が高い金属は、放熱材としても用いられています。

アルミニウムや銅などを素材にすると、ステンレスに比べて板厚が厚くても効果的に放熱できます。

切削加工やプレス加工の際に発生する加工熱が全体に伝わりやすいため、熱膨張によって内部応力が残り、加工後に変形が起こる程度が小さいことも特徴です。

そのため、加工時に機械にかかる負担も少ないというメリットもあります。

熱伝導率が低い金属のメリット

金属の熱伝導率が低い場合、断熱性が高く、機能的に使いやすい製品を製造できる可能性があります。

多くの金属は熱伝導率が高く、ガラスや木材に比べて断熱性が低いという特徴がありますが、ステンレスやチタンのように、銅やアルミニウムに比べて熱伝導率が低い金属を使用することで、断熱性を高められます。

また、熱伝導率が低い金属は加工が難しいことが多いですが、場合によってはその特性が有利に働くこともあります。

例えば、アルミニウムは融点が低く熱伝導率が高いため、熱の制御が難しく溶接加工が困難です。

一方、ステンレスや鋼材のように熱伝導率が低い金属は、溶接がしやすい傾向があります。

溶接部位が均一に加熱されやすいため、溶接時に発生する熱によるひずみや変形が少ないからです。

当社での熱伝導率が異なる金属の加工事例

まとめ

金属の熱伝導率は、熱の伝わりやすさについての物理量です。

金属の加工性にも、製品の性質にも影響があるため、金属製品の素材や加工方法を選ぶときには熱伝導率を考慮することが大切です。

金属加工では加工熱の発生を加味した設計をして、不良が生じないように加工していきます。

弊社では熱伝導率の異なる金属の曲げ加工に対応してきた経験があります。

曲げ加工でご希望の素材がある際には、お気軽にご相談ください。